STUDIO VISIT _ MARGARIDA FABRICA interview | CASTELLA NOTE

2020/04/18 16:17




気持ちよく晴れ渡ったある日、リスボンにあるマルガリーダの工房を訪れた。私たちを迎えてくれたのはマルガリーダと夫のアンドレ。アンドレはセイラーであるかたわら、マルガリーダの制作のパートナーでもある。マルガリーダの作る器といえば、シンプルで機能的ながらあたたかみのあるフォルム、そして水面を映したようなナチュラルな色使いが印象的。その源流を探るべく、やわらかな光が降り注ぐ工房で二人に話を聞いた。

M: Margarida / A: Andore

-ポルトガルでは赤土の陶器が伝統的に作られていますが、素材として磁器を選んだのはなぜですか?

M: 磁器は耐久性があるし、何よりその白さが必要でした。わたしたちの器づくりでは、表面が白く明るいことが重要です。そのほうが色を使うときもきれいだし、食べ物が引き立つからです。ポルトガルでよく使われる赤土でも白い表面を試してみましたが、それでは望む白は得ることができませんでした。磁器だととても薄く作ることができるし、とても明るい。だから素材として磁器を選びました。

-デザインをするときに大切にしていることは?

M: 使いやすさが一番、そしてもちろん形と色のことを考えます。ただ、私にとっては、器はあくまで引き立て役。それだけで目立つものではなく、シンプルで、機能的、そして食べ物をいれたときにきれいにみえることを大切にしています。色は白が基本です。ほかには自然のミネラルを使ったナチュラルな色を使います。ミネラルをミックスしてまずは小さなチップを使って色を探します。いい組み合わせが見つかったらそれを書き留めて色づくりのレシピにします。

-プロダクトデザインを学んだと聞きましたが、仕事として陶芸を選んだのはどうしてですか?

M: 卒業後、コンピューターでデザインする仕事も考えました。でもやっぱりコンピューターに向かって一日中過ごすことは耐えられないし、何より手を使った仕事をしたいと考えました。陶芸はとても時間がかかるもの。たくさんの工程があるし、乾かすのにも時間がかかります。すべての工程がとてもゆっくり。でもそこが気に入っています。

-陶芸の技術はどこで学びましたか?

M: まずデンマークで学び、その後オランダで学びました。ポルトガルでは手工芸は何年もの間忘れ去られた存在でした。とても大変な仕事だし、給料もよくない。多くの人は医者やエンジニア、建築家などの職業につきたがり、工芸を好んで学ぶ人はいなかったのです。今でこそ大学に工芸の技術を学べるコースができましたが、私のときにはそうした環境はありませんでした。

-最近ポルトガルでは伝統的なものを復興しようという動きが見られますが、きっかけがあったのでしょうか?

A: もとを辿れば1974年の革命の影響です。革命のあと人々はよりよい暮らしを約束され、一度は伝統的な手工業から離れていきました。しかしアメリカンドリームはやってこなかったのです。再び伝統的なものを取り戻そうとする動きが生まれました。でも遅すぎたものも多いです。多くの職人たちは技術を誰かに伝えることなく亡くなってしまいました。

-ポルトガルの作り手たちは「必要以上は作らない」「自分たちが作れるだけを作る」という印象があります。マルガリーダはたくさんの注文が来た場合どうしますか?

A: 今でもマルガリーダの器を扱いたいというショップはたくさんありますが、常にすべてのオーダーにこたえるわけではありません。
M: リスボンはここ数年観光客が増えて、経済も上向いているので、作品を扱いたい、どんどん売りたいというお店も増えています。でも彼らにはまず「落ち着いて」と言いたい。これは私のプロジェクトです。使ってくれる人に届くまでのプロセスも大切です。できれば直接手渡したいし、ショップに置くときもフェアな関係を大事にします。
-ちなみにひとつのものを作るのにどれくらいかかるのでしょうか?
M: 1ヶ月くらいでしょうか。完成までにたくさんのステップがあり、焼きの工程は二度入ります。そのときによりますが、作りはじめて商品として届けるまではだいたいそれくらいです。

-一日のスケジュールを教えてください。

M: 朝9時から夕方の5時か6時まで、工房で一緒に働きます。工房に来るとまず水を移す作業から始まります。作陶に必要な水を再利用するためです。その後制作に入りますが、アンドレはセイラーでもあるので海に出ていることも多いです。その場合は一人で作業します。1時間ほどは、メールやオーダーの対応、荷物を出すため郵便局に寄ったりするのに時間を使います。基本的には月曜から金曜までですが、ときどき窯の様子を確認するために週末も工房を訪れます。※1

-何をやっている時間が一番好きですか?
すべての工程が好きですが、最後に梱包して作品たちを送り出す時間は、すべての作業を終えリラックスする瞬間です。

-週末はどんな風に過ごしているのですか?
自然が好きなので、シントラ※2 に行ったり散歩したり。ピクニックはしょっちゅうしています。そこで本を読んだり、水彩でスケッチをしたりしています。

-水彩ではどんなものを描くのですか?
風景です。

-バカンスの過ごし方を教えてください。
アソーレス諸島※3 にいきます。スイミングをしたり自然を楽しんだり。とてもリラックスするし、エネルギーをもらいます。

-ところで二人はどこで知り合ったのですか?
M: 10年前にデザインを勉強をしていた頃に知り合いました。アンドレは音楽を勉強していて、共通の友人と日本のオペラを観に行ったのがきっかけです。何のオペラ?昔のことだから忘れてしまったわ(笑)


※1 このインタビューの後、2018年冬に娘が生まれた二人。現在では4時までで仕事を切り上げ娘を迎えに行きます。
※2 シントラ: リスボンに隣接する自然豊かな街。かつて王族たちの避暑地として栄え、美しい宮殿や城壁が今も多く残るため、街全体が世界遺産に認定されている。
※3 アソーレス諸島:リスボンの西約1500kmの大西洋上に浮かぶ9つの島。ポルトガル最高峰のピコ山があり、美しい自然にめぐまれた火山島。


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